まちづくりを熱海から学ぶ、市来広一郎さんトークイベントを開催

2021.02.07News

コウダイ企画室。代表の小林紘大です。
突然ですが、熱海というまちについて、どんなイメージがありますか?すぐに思い浮かぶのは観光、温泉ではないでしょうか。また、まちづくりに興味がある方であれば「熱海の奇跡」という本を思い浮かべるかもしれませんね。

熱海は「観光白書」で観光地再生の事例として取り上げられるほどの、まちづくり先進エリアです。今回の記事では、熱海まちづくりの中心的プレイヤー、市来広一郎さんをお迎えしたトークイベントについてご紹介していきます!

1.熱海の市来さんに新潟にきていただいた理由

今回のトークイベントは、私がメンバーとして参加している本町8Banリノベーションの企画でした。私たちが活動する本町は、こんな特徴があるのですが…

<本町エリア>

 【歴史】繁華街近くの市場のまちとして栄えた
 【立地】移動の利便性高い
 【資源】長く続く名店+空き店舗

どことなく、熱海と共通点がありそうだと感じていました。熱海の特徴をざっくり押さえるとこんな感じです。

<熱海エリア>

 【歴史】温泉・観光のまちとして栄えた  
 【立地】移動の利便性高い
 【資源】昭和レトロな街並み+空き店舗

実際に熱海を訪問し、やはり熱海と本町は似ているのでは?と感じた私たち。2020年9月に熱海の市来さんを訪ね、本町8Banリノベーションの事業についてコーチングをお願いしました。(熱海を訪問したときの記録はこちらです。)

その後、市来さんからのアドバイスをいただきながら事業計画を作っていきました。途中コロナの影響もあり、変更を余儀なくされた部分もありましたが、実行に向けて着実に活動を進めています!

今回のトークイベントは、今後の本町8Banリノベーションの目指す姿を、よりクリアにして仲間を増やしていきたいという思いから開催しました!

[写真]市来さん(右から3番目)と本町8Banリノベーションメンバー

またトークイベント前に、市来さんと私たちで、新潟まち歩きを行いました。

<新潟まち歩きスケジュール>

 新潟駅 TABI BAR & CAFÉ from SUZUVEL
 沼垂  沼垂テラス商店街 
 本町  まち歩き+村木ビル見学
 古町  とんかつ太郎
 新潟駅 MOYORe:(トークイベント会場)

2.まちづくりビジョンは実践をもとに柔軟に進化させる

まち歩きの後は、いよいよトークイベントを開催。はじめに、本町8Banリノベーションチームより、本町での取り組みを発表しました。

[写真]トークイベント当日の様子(オフライン)

本町の現状を皆さんと共有した上で、市来さんから熱海のまちづくりについて伺いました。この記事では、その序盤のお話を抜粋してご紹介します。

<熱海のまちづくりのお話(抜粋)>

市来さんが熱海にUターンし、まちづくりに取り組み始めたばかりの頃のこと。地元に住んでいる人たちが、熱海のことを知らなすぎるし、まちを楽しんでいない…自分自身もそうかもしれない、と思ったのだそうです。そう感じたことをきっかけに、まずは自分が熱海を知るため、まちで気になった人たちの取材を開始。その取材の中で出会った人たちとともに、熱海のエリア内でのファンづくりを目的としたツアー「オンたま(熱海温泉玉手箱)」を始めました。このオンたまをきっかけに、まちに深く関わろうとする人が増えていきました。

オンたまの次に取り組んだのは、商店街に増えていた空き店舗の問題。当時、専門的な知識がなかった市来さんのチームは「妄想力」を駆使して理想のまちを思い描くことから始めました。その後、民間まちづくり会社「株式会社machimori」を立ち上げ、熱海銀座の1軒のカフェからリノベーションまちづくりをスタートしました。

市来さんのお話の中で、とくに印象に残ったのは、エリアビジョンを柔軟に変化(進化)させていた点です。エリアビジョンはまちづくりを進めていく上で重要な基本軸となるため、それを変化させるということは、軸がブレてしまう危険性を伴います。ところが市来さんは、まちの解像度が上がっていく中で見えてきた個性を加えて、エリアビジョンを柔軟に変化させており、とても驚きました。

当初、熱海のエリアビジョンは

クリエイティブな30代に選ばれるサードプレイスとなる

と設定していました。
まちづくりを進めて、まちの姿の解像度が上がっていく中で見えてきたものを取り入れ次のようなエリアビジョンに進化しました。

クリエイティブな30代に選ばれるサードプレイスとなる
〜観光と定住の間のグラデーションある
 多様な暮らし方ができる街〜

また、個別の取り組みでも「まずやってみて、実践から見えてきたことを反映させて次に進む」という姿勢で進めてきたとのこと。「まちづくりビジョンは実践をもとに柔軟に進化させる」という、市来さんの考え方を知れたことは、今後のまちづくりの参考になりました。

3.まちづくり関係者との関係構築・人材育成

トークイベント終了後の質疑応答の時間、参加者からはたくさんの質問が寄せられました。その中でもとくに多かったのは、関係者との関係構築・人材育成に関する質問です。ここではその一部をご紹介します!

質問:リノベーションの取り組みは、市来さんがいなくても自走できる状態になっていますか?後継者育成はどうしていますか?

回答:自分は新しいものを作る役割で、現状を改善することは得意ではないし、他の人に譲っていっています。育成については、対外向けで制作した起業者育成プログラムを社内の人間に対して実施しています。

質問:Uターン者、移住者でまちづくりをしようとすると、ずっと地元にいた人との関係性が難しいのではないかと思いますが、どのように関わってきましたか?

回答:外の人と、地元の方とで一緒にまちを楽しむ機会を作ることが大切なのかなと思いました。外の人が感じている、まちの楽しみを共有できていくと、地元の方が変わっていきました。そういった機会を繰り返し作るうちに、地元にいた人の中で、変わりやすい人から変わっていく。それを続けて、ポジティブな関係を築ける人が増えていくといいなと思っています。

質問:行政の人に期待することは何ですか?

回答:行政の方が、人手を出して活動を一緒になってやってくれたのはありがたかったです。後は行政じゃないとできないこと、例えば公共空間を使いたい時に使えるようにする、というようなことをやっていただきたいと思っています。

また、質疑応答の中で、コロナの影響による熱海の飲食・宿泊業の現状についてお伺いすることができました。人の移動という意味合いでは減っているものの、新たに出店する人がいたりポジティブな空気感があって、これまでやってきた熱海のまちづくりは間違っていなかったと実感されているそうです!

個人的には市来さんが「専門分野は熱海です」とされていること、かっこいいなあと思いました。私も「専門分野は新潟」と言えるようになっていきたいと思います!

[写真]トークイベント終了後の写真撮影(オフライン会場)
[写真]トークイベント終了後の写真撮影(オンライン会場)

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本町8Banリノベーションで企画した、市来広一郎さんトークイベントの開催経緯や当日の様子についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

現在、本町8Banリノベーションでは空き店舗探しや、路上マーケットの出店者探し、WEBマガジン制作に向けて動いているところです。この記事を読んで、私たちの活動に関わってみたいという方がいらっしゃったら、まずはお気軽にお問い合わせください。お待ちしております!

文/小林紘大  構成/ヤマシタナツミ